土地が二転三転しても、施主は建築家・岩瀬英志さんのもとを離れなかった。長い時間の末に見つかったのは、細い路地の突き当たりにある傾斜地。だが岩瀬さんは、この土地を勧めなかったという。それでも施主は、ここに決めた。道路より低い敷地、打てない杭、高低差が生む法規の制約。ひとつひとつを解いていった先にできあがったのは、外観からは想像もつかない、3層の住まいだった。
この建築家に
リビングの先端まで進むと一気に視界が抜ける。高台から屋根の連なりの先まで見渡せる抜群の眺望。防火の要件を満たすため、大型のスチールサッシと網入りガラスを採用した。天井は最高部で約4mに達する
リビングは、シンプルな空間。壁は石膏ボードのEP塗装。床はナラ材のフローリング。奥のスリット状の窓からも光が差し込む
夕景のリビングは、昼間とは違った落ち着き。裸電球のようなレトロな照明はFさんが選定し、形の異なるものをあえて混ぜた
あえての大開放を閉じた壁はFさんの提案。そこへ階段をもってくることで、「開く」と「こもる」のリズムが誕生。天井の天窓からの光は、細かなルーバーで柔らかく拡散。天空への階段となった
3層目のダイニングキッチンからも抜群の眺望が。造作キッチンは崖側を向いて据えられた。「一人で使うのだから、壁に向かうより景色を見ながらのほうがいい」と岩瀬さんは考えた。天板とシンクは一体のステンレス
背面の壁は収納にせず、六角形のタイルと細い棚だけとした。両脇のスリットの奥にパントリーと家電置き場があり、生活の道具は壁の裏に納まる。タイルはFさんが選んだもの
1層と2層をつなぐ鉄骨の造作階段は、壁から持ち出され、宙に浮くように架かる。踏板と同じ高さで水平に伸びる板が、そのまま棚になっている。左手は水まわり、右手は寝室
扉で仕切らないオープンな寝室。「一人で暮らすのだから閉じる必要はない」という判断。窓が設けにくい場所だからこそ、右側に袖壁を設け、側面から光を取り込んだ
1層目はひと続きの空間として構成。右に鉄骨階段、左に屋外テラス、正面は、洗面・トイレからシャワーブースへ。テラスの床に仕込んだ照明が、夜はコンクリート壁を下から照らす
洗面もトイレも閉じていない空間。壁にはFさんが選んだ六角形のタイル。突き当たりのシャワーブースに落ちる青い光は、照明ではなく天窓から入る自然光








