神奈川県の北鎌倉に、独創的な平屋の住宅が誕生した。この作品が持つ特徴は主に3点。最大1mの敷地高低差を、室内の段差で解消した点。建物を15度回転させるだけで、プライバシーを確保した点。夏でもエアコン1台で過ごせる費用対効果が高い断熱性を確保した点だ。工夫が詰まったこの作品をご紹介しよう。
この建築家に
1mの敷地内高低差を感じさせず、周囲と調和して違和感もない外観。高低差を建物内の段差で処理し、外観は普通の平屋に見えるところがポイントとなる。周囲に溶け込むよう、近隣の家の窓の大きさや数まで調査し、合わせた。当然、外壁や屋根の色や形状にまで気を配っている
外観。家屋の外壁は右半分は敷地と平行で、左半分が15度だけ敷地奥側に回転している。妻から出されたプライバシーを確保したいという要望への回答だ。道路から見ると気がつかないほどの処理で、道路や隣家からの視線が入りにくくなる。カーテンを使わないどころか、カーテンレールがない生活を実現した
通常の2倍の幅を取った、南側の庇。室内に直射日光が入ることを防いでいる。屋根裏の高性能な断熱材の使用と併用することで、高い断熱効果を得ることができた。室内に数台のエアコンを設置しているが、断熱効果が高いため、結局1台しか使っていないそうだ
軒裏や屋根は、シルバーに。庭の緑や空の色を反射することで、周囲に溶け込むことを狙った仕掛けだ
もっとも高い位置にあるフロアから見た室内。フロアは敷地の高低差にあわせ、3段にわかれている。最上段がリビングと作業スペースと個室、中段が玄関・ダイニング・キッチン・水回り・寝室。最下段は将来の子ども部屋にも転用できるワークスペースとなっている
最下段のフロアから見た室内。各フロアは天井から吊り下がる、“垂れ壁”で区切られている。段差と垂れ壁で空間をコントロールし、床面積が広いLDK空間を3つのゾーンへと切り替えている。
室内の各テーブルはシルバーに塗装され、空間を引き締めるアクセントとなっている。キッチンもグレーの大判タイルを使用した造作で、統一感が保たれている
老後の生活を考え、優先順位が高いスペースは中央の2段目に集約した。玄関・キッチン・ダイニング・浴室・洗面・トイレ・寝室はすべて2段目に配置されている
キッチンはアイランド型。複数人が同時に集まることを想定し、対面でも調理できるように工夫されている
リビングから見た庭方向。建物を15度回転させるだけで、隣家や道路からの視線をカット。リビングはもっとも奥の高い位置にあるため、特にその効果が高い。妻の要望を実現し、窓にはカーテンレールすらない生活を実現した
書庫も造作で、最大限に収納できるものとなっている。読書用の椅子や照明もあり、落ち着ける場所の一つだ
垂れ壁は各エリアの光を反射するため、場所ごとに異なる表情を表す。中央はトップライトから差し込む、青みがかった晴天の明るい色を反映。一番下は窓のすぐ外側にある庭木の緑を反射。色や明るさの違いで、各スペースの空間を切り替える機能も持っていることがわかる
すべての壁は檜のパネルを白く塗装して使用。既製品のパネルの中央にスリットを入れた、めずらしいオリジナルパネルだ。檜の香りや木の温もりを感じつつ、木目が透ける程度に塗装することで、空間に爽やかな印象を与えることができるという。垂れ壁の下部にはアルミの見切り材を使用した。庭の緑を反射するなどの効果もある