八ヶ岳の森に心地よく浮かぶ船のような別荘。富士山を望む大開口やアートが溶け合う洗練された空間は目を奪う美しさだが、本質はそれだけではない。厳しい自然環境の中で驚くほど快適に過ごせるよう、徹底的にノイズを削ぎ落とした意匠など、細部にまで建築家・佐野さんの技とこだわりが凝縮されている。ただ美しいだけでなく、高い機能性と上質な意匠が奇跡的なバランスで響き合う、極上の一棟の全貌に迫る。
この建築家に
八ヶ岳の大自然中に佇むK邸。晴れた日には遠く富士山が見える。
水平に伸びやかで、地面から少し浮いたような長方形の佇まいは、船をモチーフに。外壁は周囲にマッチするよう、硬質で耐久性の高い「セランガンバツ」を採用。
夜になると、室内の明かりが光のラインとなり、幻想的な雰囲気に。寄棟の屋根は、大きな庇を生む。
足元の地窓から漏れる玄関照明の光が、幻想的な雰囲気を演出。正面に貼られた表情豊かな石材のアクセントウォールは、実用的な薪の保管スペースを目隠しする役割も兼ねる。
道路側からは想像もつかないダイナミックな印象。大窓であっても森に囲まれているので解放感を存分に味わえる。
自転車もゆったりと置ける広々とした土間スペース。愛犬の足洗い場も設けられており、ペットとの暮らしを快適にする配慮も忘れていない。
晴れた日には、真正面に、雄大な富士山が。訪れた人は誰もが思わず「おおー」と感嘆の声を漏らすに違いない
空間の主役として据えられた薪ストーブは、暖房だけでなく(暖房は床下のオイルヒーターで)、炎のゆらめき、薪のはぜる音、木が焼ける香りなど、人間の五感を優しく満たすための最高のアクティビティ。
壁にはニッチを設け、愛犬のエサ置き場に。床も滑らない素材のタイルをはった。愛犬とともに極上空間で過ごす時間は、何ものにも代えられない豊かさだ。
リビングの先にある和室の入口は、格子戸で。まるで別世界への入口のよう。
落ち着きのある和室は。作家の卓越した筆致により、水墨画のように仕上げられた襖絵や壁のテクスチャーは、コーディネーターがセレクトしたもの。床には昇降式のテーブルが埋め込まれるなど、圧倒的な上質感の中に優れた利便性を兼ね備えている。
琉球畳を市松に敷いた和室は、まるで森の景色を切り取ったかのような一面の大窓が穿たれている。