モダンな外観が目を引くこの家には、生活感のない洗練された見た目とは裏腹に、暮らしのリアルに寄り添う工夫が盛りだくさん。飾らない日常を真摯に見つめる中村喬さんの設計思想、完成した住まいにちりばめられた温かな心遣いを紐解く。
この建築家に
南の庭から見た「藤井下組の家」。屋根の勾配は一見すると傾斜を感じさせないほど緩やかで、すっきりとした水平ラインが際立つ。重心が低く、外に向かって開いたシンプルモダンなデザインは、ゆったりくつろげる落ち着いた居心地とのびやかな開放感を予感させる
ピロティにある白い外階段は外観デザインの素敵なアクセントだが、屋根のメンテナンス動線、外部の視線除けなどの実用的な目的も。また、階段下部の近くの掃き出し窓の先には洗濯機置場を備えた脱衣室があり、洗濯物を干すルーフテラスへの家事動線としても活躍する
東の外観。車庫棟(写真左)から玄関(写真右)までのアプローチの上部にはルーフテラスがあり、車でも自転車でも、雨に濡れずに家に入れることがポイント。「日常的に車や自転車を多用する地域ですので、雨の日に雨具ナシで移動できるアプローチは必須です」と中村さん
南の外観の夕景。建物と中庭はピロティ+建具によって守られているため、中庭に面した住空間は大胆なガラス張り。日が落ちて明かりがともると建物そのものがガラス箱の照明のように光り輝き、高級レストランやホテルのような非日常感が漂う
建物は室内~テラス~中庭という構成で屋外への広がりを感じられる造りだが、北関東の強風で埃が入るのを防ぐため、室内とテラスはあえてフラットにせず、少し段差を設けている。中庭に敷き詰めたのは高級石材の大谷石。中村さんは独自ルートでコストを抑えた仕入れが可能
ピロティの建具を閉めた中庭をLDKから見る。南の庭との間に設けられたピロティは、オリジナルの建具付き。木製の水平スリットの間には網が仕込まれていて、中庭を含む住空間のプライバシーを守ると共に、周囲の田畑のカエルや虫が入りにくいようにする役割も兼ねている
「帰宅して最初に触れるものはオリジナルで」と玄関扉は造作に。靴収納は上部が引き出しで小物入れに最適
視線が抜け、心地よい開放感に包まれるLDK。壁は漆喰、床はブラックチェリーを採用。天井はレッドウッドで、経年で色が濃くなるブラックチェリーに合うよう深めの色で塗装した。寄木細工のような造作のダイニングテーブルなど、表情多彩な木々のバランスが絶妙
キッチン・ダイニング。写真右奥の玄関の先にはクロークがあり、そこから食品庫を通ってキッチンにアクセスOK。造作のキッチンはビルトインオーブンが高めの位置でしゃがまずに使えて便利。冷蔵庫は将来的な買い替えを見据えてビルトインにせず、食品庫に置く計画としている
キッチンからの眺め。中庭側の大開口からはピロティや南の庭、その先の田園風景までを見渡せて抜群の開放感。キッチンに立つと玄関ホールの出入口(写真左)、ダイニング、リビングなどを俯瞰でき、家事をしながら家族の様子を見守れる
家族の誰もがパソコンやスマートフォンを使いこなす現代の生活に合わせ、書斎(写真右奥)は多彩な情報に触れる家族の図書館としてプランニング。壁で完全に囲わずガラス戸を入れてキッチンの動線の延長線上に配置し、ほどよい一体感と集中できる独立感を両立させている








