半導体の研究者であるお施主さまのご希望は、部屋の隅が透けたすっきり美しい部屋と、研究を継続するための防音・防振設備の整ったラボ。建築家の木島さんは、鋭角に惹かれるお施主さまに、多角形で面積以上の広がりを感じられる空間を提案した。直角の少ない室内からの眺望の豊かさには、誰もが驚くことだろう。
(メイン画像:木島千嘉建築設計事務所 提供)
道路側から見た南西外観。この区画だけ長らく農地だった為、家が建つことで生まれる圧迫感を最小限に抑えるよう周囲の隣家との距離や対峙する壁面の大きさを調整した。正面は鋭角にセットバックすることで両隣の家の植栽が自然に連続している
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庭側から見た北東外観。ラボ2は、二面をガラス張りとし開放的、かつコンパクトな平屋とすることで周囲への圧迫感を回避した。道路からは右のポーチ越しにアプローチする。大きな機器は掃き出し窓から直接搬出入が可能
1階ラボ2。周辺隣家と距離を取りつつ、鉄骨柱で鉄筋コンクリートスラブを支持させ、庭と一体化する開放的な空間を獲得。天井の吸音材や遮音カーテンにより軽微な防音・防振性を備えている
1階ラボ1。コンクリートの床壁天井に、遮音材、躯体とゴムで絶縁した仕上げを組み合わせ、防音・防振性を確保。「オーディオルーム、ピアノ練習室以外でも子どもの声やペットの鳴き声など配慮が求められる場面は多様。設計でも様々なレベルでの音対応ノウハウが必要」と木島さん
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2階、広間からテラスの先端を見る。左手の引き戸は階段室。階段室からはそのままテラスに出ることも可能。天井やフローリングを鋭角に向けて割り付け、大きな開口とは異なる方向へ視線を誘う。コーナーに物を置くことを鋭角によって避け、空間の余白を維持する
2階キッチンから広間、テラスまでを見通す。面積以上の奥行き感はこの家ならでは。柱の裏は客間として、柱を拠り所に引き戸とカーテンで仕切ることも可能。将来、寝室として2階だけでバリアフリーな生活を完結させることもできる
2階、広間から西側テラスを見る。テラスは格子戸だけでなく床の木製デッキにも防虫網を設置することで、風の抜ける半屋外的な居場所が拡張される。2階はRC造だが、格子戸に合せ、木製サッシ、フローリング、天井板など木質材料を多用し、集う場としての温もりを得た
2階テラス。上から3分の1あたりに回転軸をもつ木製格子戸。紐を引き、跳ね上げ固定する。右は広間に続く木製サッシ。軒の深さと格子戸で雨掛かりのリスクが低くなることからアルミではなく木製の、さらに珍しい国産スギのサッシを採用した
広間からテラス越しに緑地公園を眺める。木製格子戸を水平まで跳ね上げると、建具の存在が消え桜並木だけがパノラマ的に広がる。この眺望を獲得するため、縦桟の不要な建具の機構を考え抜いたと木島さん。ダイニングテーブルは様々な角度に馴染む楕円形を選択
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3階。構造は西面に向かって線対称だが、あえて左右で斜め壁と床面の取り合い高さや付け柱などを変えることで、動きのある空間をつくり上げた。中央に柱のない架構により、螺旋階段からの眺めを最大限に生かすことができた。奥は書斎。緑雲の上で仕事をしているよう、とお施主さま
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木造の架構を現しとした3階。スポットライトによる間接照明がメイン。「特に住宅では寝転がって天井を眺める事が多いので、器具はなるべくつけずにすっきり美しくさせたい」と木島さん。ボロノイ畳の寝台は枕の位置をどこにしてもよく、どの向きでも違う美しさがあるのは楽しい
ボロノイ畳は単一の素材ながら、畳目の角度によって光の反射が変わり色合いが多様に変化する
3階、書斎からテラスを見る。緑豊かな公園や桜並木の西側だけでなく、北東側にも長閑な甍屋根越しに筑波山を望む景色が広がる。テラスを円形にすることで、さまざまな方角に意識を向けやすくなっている